ワクチン接種ほぼ終了

反対農家除き終了=ワクチン接種−口蹄疫
 宮崎県は26日、口蹄(こうてい)疫の拡大防止のためのワクチン接種について、反対農家約20戸が飼育している家畜を除き終了したと発表した。対象頭数に占める比率は99.6%という。
 県によると、ワクチンの接種対象頭数は当初約14万5000頭を見込んでいたが、感染の疑いで対象から外れた牛や豚が除外されたため約12万5200頭に減少。同日までに12万4698頭が接種を終えた。反対農家に対しては今後も説得を続ける。
 一方、県は特例的に避難させた優良種牛5頭を、新たに造った鉄筋製畜舎2棟に2頭と3頭に分けて移した。これまでいた畜舎と同じ敷地内としている。(2010/05/27-00:44)

 ワクチン接種が終了したので、この数日間封印されていた問題が明日辺りから報道され始めるのだろう。

 宮崎県発表の「口蹄疫の疑似患畜の確認(210〜218例目)について」http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/nosei/chikusan/miyazakicow/h22koutei91.htmlを見ると、24日にワクチンを接種して翌25日に発症患畜が家畜保健所に通報されているものがある。ワクチネーションの段階でもViremia(ウイルス血症)になっていた個体があったと思われる。連続注射器でワクチネーションしているそうなので、1週間後が不安である。
 


 

これから

 ワクチン接種で口蹄疫がおさまるかどうかわからない。どちらかと言えば、私は悲観的である。

 最悪の場合、汚染が常在化し、これから清浄化に向けて長い長い戦いが始まるのかも知れない。施設や法律の問題があって、動物衛生研究所でしか口蹄疫の研究が出来ないかも知れないが、優秀な若い獣医ウイルス研究者が、使命感をもって動物衛生研究所に入所して、この問題(他にも色々問題が山積している!)に果敢に取り組んでくれることを願う。また、このブログを見た人は、獣医はこんなに重要な仕事をしているのだと理解して欲しい。

 また国も、動物衛生研究所や動物医薬品検査所などにもっと若い研究員と中堅の研究員を増やす方向で動いてくれるように切に願っている。

  農林水産省の平成22年度の予算の資料http://www.maff.go.jp/j/budget/2010_2_2/pdf/h22pr_4.pdf を見て欲しい。
 これをざっと眺めれば、いかに伝染病が軽視されているかわかる。
 項目15と16に口蹄疫のことが書かれているが、15と16の予算規模は、合わせて61億円。口蹄疫ウイルスに関する基礎研究には、おそらくせいぜい数百万円しか使われていないと思う。
 
 意外に思われるかも知れないが、農林水産省では獣医の立場は弱い。畜産研究に回る予算は、稲作研究に回る予算の足下にも及ばない。畜産研究の中でもウイルス研究に回る予算はとても少ない。おそらく「蚕」の研究に回る研究費よりも「牛豚鶏のウイルス病(すべて合わせても!)」にまわる研究費の方が少ないだろう。
 
 獣医ウイルス学はどうでも良い研究分野ではないのだ。今回の口蹄疫に便乗するわけではないが、国には予算の増額と人員の増員を求めたい。 

ウロンコロンさんのブログに涙しない獣医はいるのだろうか?

 ワクチン接種の状況をブログで公表していた畜産農家があった。
 ワクチン接種 | *☆気ままにウロンコロン☆*
 悲しい気持ち、悔しい気持ち、痛いほどわかる。

 あと数週間後、がらんとした畜舎で家族は何を思うのだろうか。
 切ない。切なすぎる。
 何もかも受け入れて赦してくれる牛さんは偉大だ。

 涙が出る。

 さらに日記をさかのぼった。
 現実逃避 | *☆気ままにウロンコロン☆*
 この日のブログ、画面の前で涙が止まらなくなった。

 今回の口蹄疫は色々な面で考えさせられている。
 国の脳天気ぶりに早くから気付いていながら、農水省にも官邸にも電話一本入れなかった。そして今も実質何も役に立っていない。

 大学でウイルスの研究はしているが、畜産農家の何の力にもなっていない。前任の獣医系大学では口蹄疫について講義も何度もしたが、リアリティをもって講義していなかった自分も恥ずかしい。

良いことだが悲しいこともある

農水省口蹄疫拡大で国や県の防疫態勢調査へ
 
 宮崎県で口蹄疫(こうていえき)が蔓延(まんえん)している問題で、農林水産省は25日、国や県の防疫態勢に問題があった可能性があるとして、調査に乗り出す方針を固めた。
 外部の専門家でつくる「疫学調査チーム」で調べる見通しだ。赤松農相はこの日の衆院農林水産委員会で「口蹄疫の抑え込みと同時並行で、対応を検証する」と述べた。
 同省幹部らによると、川南(かわみなみ)町などで口蹄疫が拡大した理由として、〈1〉埋却地の確保に手間取り、殺処分が遅れた豚から感染が広がった〈2〉人や車両の消毒が徹底されていなかった〈3〉同県が発生確認の3週間前に口蹄疫を見逃していた――などが考えられるという。
 2004年に定めた国の口蹄疫防疫指針では、「都道府県はあらかじめ市町村と協議し、焼却、埋却場所の確保に努めるよう指導する」と規定しているが、同省は、この指針が十分守られていなかった可能性もあるとみており、調査チームは、埋却地の確保状況や、発生直後の消毒の実施状況などを調べる方針だ。

 農水省などによると、24日現在、同県東部では今月10日に川南町で感染が確認された養豚農場で飼育する豚約7900頭の殺処分が終わっていないなど、埋却地確保が難航したため、感染した疑いのある豚が生きたまま約2週間放置されているケースもあるという。
 対照的に、4月28日に最初の感染が確認され、計4農場で感染が判明した同県西部のえびの市では、感染がわかった翌日には、すべての農場で農家の所有地に殺処分した牛や豚を埋却し終えていた。また、同市では埋却場所の不足に備え、約5000平方メートルの市有林も準備していた。同市では今月13日を最後に感染疑い例は出ておらず、同県は24日、移動制限解除に向けた検査を始めている。
 現地対策本部長を務める山田正彦・農林水産副大臣は25日、川南町周辺での感染について、「72時間以内に埋めるのが当然だが、埋却できずに豚が何万頭も放置された」と指摘。また、初動対応に遅れがあったことも認めている。(2010年5月26日03時03分 読売新聞)

 太字の部分の(1)と(2)の部分、確かにその通りなのですが、埋却地をすべての都道府県は用意しているかというとそうではないと思われます。特に大規模経営が多い宮崎、鹿児島は、事実上用意していなかった、いやできなかった(予算の問題)と思われます。もし、畜産を経営する前提として埋却地を用意することが必須ということであれば、そのための細かい規則(法律)や罰則も作っておくべきだったのではないでしょうか?たとえそれは県が法整備するとしても、国の指導はあってしかるべきだと思います。
 人や車両の消毒が徹底されていないのも、最初から報道などで分かっていたのだから、県が徹底していなかったのであれば(それとても消毒薬が不足していたのでは?)、国がもっと手をさしのべるべきだったのではないでしょうか?
 (3)の部分は本当のところは私には分かりませんが、致し方なかったのではと思います。
 私は、検証することはとても大事なことは分かるのですが、今、すぐにやるべきことは今現在の感染の広がりを阻止することでありますから、あまりそちらにマンパワーをかける時期ではないと思います。その外部専門家チームのマンパワーがあれば、今の感染の広がりを阻止するための、アイディアを出してもらう方がよいのではないでしょうか?確かに不手際があったとしても、次の感染に活かせるように色々と法整備をすすめて欲しいものです。今の指針は都道府県に過度の負担を強いているような気がします。負担させるのであれば、それなりの予算も必要ですが、このご時世。。。。
 疫学調査チームですが、公平性を上げるためにも、農林水産省に関連する人(もと農林水産省およびその関連施設を含む)は少なくするべき(1/4以下)だと私は思います。
 

家畜伝染病予防法

第十六条
 次に掲げる家畜の所有者は、家畜防疫員の指示に従い、直ちに当該家畜を殺さなければならない。ただし、省令で定める場合には、この限りでない。

 一 牛疫、牛肺疫、口蹄疫又はアフリカ豚コレラ患畜
 二 牛疫、口蹄疫又はアフリカ豚コレラの疑似患畜

2 前項の家畜の所有者は、同項但書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該家畜を殺してはならない。

 
 「所有者が家畜防疫員の指示に従い、当該家畜を殺す」とあり、家畜防疫員ではない所有者が殺すと読みとれるのであるが、東国原知事Tweetでは、知事はこう解釈している。

higashitiji 大変申し訳ないが、少し違います。殺処分ではなく、屠殺の場合、家畜防疫員がやらなければなりません。家畜防疫員は家保の職員ですから、県職員と言うことです。RT @Yoshiki: 「口蹄疫に関して誰も殺処分の命令権を有しない」と勘違いしているようだが、家伝法16条によれば、殺処分の指示権は貴君が任命する家畜防疫員にあるのだ。後は、言われなくても判るだろう。

 
 屠殺と殺処分の違いが私には分からないのですが、その法的根拠がどこにあるのかがわかりません。

 さらにそれに答えてYoshikiさんは、

確かに、家伝法17条は口蹄疫には言及していない。農水省の「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」によれば、対策本部長に統括権があり、統括権は殺処分の命令権を含むとも読める。

 素人なので良く分からないのですが、口蹄疫の疑似患畜に関しては家畜伝染病予防法第16条が適用されるのですよね。