USBメモリー経由のウイルス感染、大学で猛威振るう
 パソコンのデータを保存する外部記憶媒体「USBメモリー」経由で感染するコンピューターウイルスが全国の大学で猛威を振るっている。
 読売新聞が主な30大学に聞き取り調査したところ、半数近い13大学で500件以上の感染が確認された。大勢の学生がUSBメモリーを持ち込み、共有のパソコンを使うことが多い大学は、その管理の甘さもネックとなって感染の温床に。重要な研究成果が流出する恐れもあるだけに、文部科学省は昨年末、全国の国立大学に文書で注意を呼びかけた。
 読売新聞が学生数や知名度などから選んだ全国30大学を対象に調査したところ、回答のあった27大学のうち13大学でUSBメモリーによるウイルス感染があり、被害件数は確認できただけで527件にのぼった。筑波大、九州大、中央大は回答しなかった。
 多くは「オートラン」と呼ばれるウイルスで、感染したUSBメモリーをパソコンに挿入すると、パソコン内で自己増殖。表面上はパソコンの動作が遅くなる程度の変化しか起きないが、実際にはパソコン内部の情報を第三者にメールで送ったり、別のウイルスを誘導したりすることもある。パソコンを解体しないと駆除できないケースもあった。
 東京外国語大(東京都府中市)では昨年11月、学生から「論文を書いていたら勝手にメール送信が始まった」と届け出があり、調べたところ、80台以上のパソコンで感染を確認した。パソコンからは大量のメールが送られた形跡があったが、どんな内容のメールがどこに送信されたかは記録がなく、「情報を抜き取られたのかもしれないが、さっぱり分からない。不気味だが検証しようもない」と同大の担当者は困惑する。
 九州産業大(福岡市)では、サークル活動棟の共有パソコン全体の3分の1にあたる20台が昨年5月に感染。1台で60種類のウイルスに感染したパソコンもあったほか、一部の学生は感染したパソコンで作成したリポートを提出し、教員らのパソコンに二次感染した事例もあった。しかも、「学内には各研究室などに大学管理ではないパソコンが3000台以上あり、すべてをチェックしきれない」(担当者)と言う。
 ほかにも、京都大で約170件、日本大文理学部(東京都世田谷区)で約200件、それぞれ感染報告があった。(2009年1月24日15時32分 読売新聞)